「梅毒」の感染拡大に直面する日本、米国や欧州の状況と比べてみた
2023年の梅毒感染者数が1万5092人で過去最多を記録するなど、日本では近年「梅毒」の増加が問題となっています。
国立感染症研究所が四半期ごとに発表している「日本の梅毒症例の動向」によると、2024年第2四半期(2024年7月3日時点)の梅毒感染者数は3554人となりました。23年第2四半期の3968人に比べて減少となったものの、それでも梅毒の蔓延には歯止めがかかっていないのが現状です。
日本の梅毒感染者数は2011年まではほぼ横ばいの状況でしたが、11年以降は右肩上がりで増加を続けています。11年の感染者数がわずか827人だったことを考えると、12年間で18倍以上に増加したことになります。
梅毒感染者が増加している背景として、国立感染症研究所は「2023年第1~39週診断例のうち、男性症例の40%に性風俗産業の利用歴があり、女性症例の40%に従事歴があった」ことを指摘しているほか、マッチングアプリの普及が一因とする報道も見られます。
梅毒患者が増加している日本ですが、これは日本だけの現象なのでしょうか。世界各国のうち北米や欧州の状況を調べてみました。米疾病予防管理センター(CDC)が2024年1月に発表した最新のデータによれば、2022年の米国の梅毒患者数は20万7255人に達し、5年間で78.9%も増加しました。人口10万人あたりの感染者数は約62.2人に達し、日本の約11.9人に比べると、米国では日本以上に梅毒が流行していることが分かります。
また、「カナダ公衆衛生庁が発表している最新のデータによると、2022年のカナダの梅毒患者数は1万3953人となり、人口10万人あたりの感染者数は約36.1人に達しました。やはりカナダでも日本以上に梅毒の感染が拡大していることが見て取れます。
一方、欧州疾病予防管理センター(ECDC)が24年3月に発表した最新のデータによると、EU(欧州連合)およびEEA(欧州経済領域)の加盟29カ国における2022年の梅毒患者数は3万5391人、人口10万人あたりでは約8.5人にとどまりました。
人口10万人あたりの感染者数を国別に見てみると、ルクセンブルクやマルタは20人を超える一方で、イタリアは約4.3人、ノルウェーは約3.6人にとどまるなど、EU・EEA加盟29カ国のなかでも流行の度合いはエリアによって大きな違いがありました。しかし、欧州でも梅毒感染者数は年々増加傾向にあり、梅毒の流行は日本だけの問題ではなく、世界的な問題だと言えそうです。